農水省のホームページで「BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)問題に関する調査検討委員会」の報告を読むことができる。官僚を排し委員会メンバーが手分けして書いた報告は、農水省をこてんばんに批判している。一九九六年に世界保健機関(WHO)から肉骨粉禁止勤告を受けながら、課長通知の行政指導で済ませたのは「重大な失政」であり、二〇〇一年に欧州連合(EU)によるBSE発生リスクの評価を拒んだのは「政策判断の間違い」という。農水省は一貫して危機意識に欠け、無能だったという評価である。
 その代償は大きい。農家や流通業界の損害は推計三千六百五十億円を超える。対策費として昨年度と今年度で約四千億円の国費が費やされる。農水省の失政がなければ、避けられたかもしれぬ国民の損害、税金使用でおる。
BSEに限らない。鈴木宗男議員が「疑惑のデパート」なら農水省は、さしずめ「失政のデパート」ではないか。
 諌早湾干拓で、農水省はノリ不作の原因究明のため排水門の開門調査を余儀なくされた。減反下で農地を増やす疑問や、有明海の生態系への影響を心配する反対論を押し切り湾を閉め切ったのが五年前だが、ノリ不作などを受け、干拓面積は当初計画の半分に修正された。開門調査は期間が短いと無意味だし、長期に及べば完工のメドが立たない。破たんが明らかなこの事業に、すでに二千億円を超す公費が使われているのだ。農水省の公共事業は開店休業の農道空港、ウルグアイ・ラウンド農業対策による温泉ランドなど噴飯ものが後を絶たない。中核事業の土地改良にしても、累計何十兆円も投じながら農家一戸当たりの経営耕地面積は、四十年前の約一ヘクタールが、いまだに二ヘクタールに達していない。
 

年間三兆円を超す農水省予算の半分が公共事業で、国の公共事業贅総額の約二割のシェアを占め続けている。国内総生産(GDP)に占める農業生産がわずか一%強、就業人口に占める農業人口が五%左下回るのに、この過大な配分が、公共投資ならぬ公共浪費を生んでいる。
 農水省の「失政」に通底するのが、
BSE調査検討委報告も指摘する行政を左石する農林族議員の影響力だ。「全国の農村を地盤に選出された多くの議員が巨大な支援団体にして強力な圧力団体を形成し、衰退する農業を補助金や農産物輸入制限などを通じて支え、生産者優先の政策を求めてきた」 (報告)。
 過保護政策の弊害は、もはや農政の失敗の域を超え、日本経済全体の足を引っ張っている。農林族が政府をせっついて中国産ネギ、生シイタケ、畳表にセーフガード(緊急輸入制限)を暫定発動したのは典型だ。中国側が日本の自動車、携帯電話、エアコンに一〇〇%の報復関税をかけた。競争力のない少数のではない。村山内閣時代の住専(住宅金融専門会社)処理で農林族の圧力で、政府が農協救済のため説明のつかない六千八百億円余の財政支出を決めた。この財政出動が世論の強い批判を受けたため、「公的預金」論議が長くタブーとなって、不良債権問題の深刻化、長期化をもたらした面は否定でさない。
 票田の涵養(かんよう)を国益に優先する農林族と、その呪縛(じゅばく)から逃れられない農水省の「失政」再生産のメカニズムを、これ以上放置することはできない。
 外務省は「たった一人の族議員」鈴木宗男氏との関係清算に踏み切った。農水省には何十倍もの「ムネオ問題」が潜在するのではないか。清算の時だ。